ゴム材料の種類・特性

ゴムの素材は多様にあり、製品の用途にあった素材選定が非常に重要です。
ここでは各種ゴムの特徴・長所・短所・使用されている商品について解説しています。




天然ゴム(NR)

特徴 天然ゴムは、その名の通り天然の樹の樹液(乳液)から精製されたゴムです。
いわゆる最もゴムらしい弾性をもったものであり、力学的性質が良いです。
長所 本来ゴムの持つ弾力性があり・機械的強度・伸縮性が良い材料です。
短所 耐熱性・耐油性・耐候性・耐オゾン性には劣ります。
天然ゆえの物性のばらつき、ごみなどの異物混入や、価格変動などが多少あります。
使用されている商品 弾性・耐磨耗性など機械的強度が大きく、タイヤ、ベルト、ホース、靴底など様々な用途に利用されています。
耐熱性・圧縮永久ひずみ・耐油性に劣るため、シールパッキンなどの用途にはあまり利用されていません。

シリコーンゴム(Si)

特徴 シリコーンゴムは、耐熱性・耐寒性にとても優れています。 耐候性にも優れた特性があり、屋外で紫外線や風雨にさらされても、ほとんど特性に変化はありません。
化学的にも安定しているので人体に対しても悪い影響を与える心配がなく、無味無臭で成型後の手触り感も良いなどの特性があります。
長所 高度の耐熱性・耐寒性・耐オゾン性をもち・さらに電気特性・非粘着性に優れ・生理的不活性が良い材料です。
また調色性に優れており、ご要望のカラー指定で調色する事が可能です。
短所 引張り強さ・引裂き強さ・耐磨耗性など力学的性質・ガス透過性・熱膨張性には劣ります。
使用されている商品 シリコーンゴムは上記のような特性から、車載部品の各種スイッチ類、耐熱配線、電子機器部品のスイッチや内部部品、Oリング、食品容器のパッキン、マウスピース等、我々に身近な製品で多種多様に使用されています。

エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)

特徴 エチレンプロピレンジエンゴムは、耐候性・耐熱性・耐寒性・耐オゾン性・耐老化性・耐薬品性などに優れています。
また、反発弾性・電気的性能にも優れているので、自動車用ゴム製品・工業用ゴム製品・建築用ゴム製品などに幅広く使用されています。
比重が市販されているゴムの中で最も小さいのも特徴の1つです。
長所 耐候性・耐熱性・耐老化性・耐オゾン性・極性液体に対する抵抗性・電気的性質が良い材料です。
短所 金属や他のゴムとの接着性が悪く、耐油性・引き裂き性は劣ります。
使用されている商品 自動車用部品、窓枠ゴム、スチームホース、電線被覆、コンベヤベルトなどに使用されています。

ニトリルブタジエンラバー(NBR)

特徴 ニトリルブタジエンラバーは、シール材として使用されています。 耐油性・圧縮永久ひずみ・引張り強さ・耐磨耗性などに優れているため、シール材として使用しておりますが、耐候性に劣るので保管場所に注意が必要です。
保管場所としてはオゾンを発生する電気装置の近くや、直射日光のあたる場所は避けて保管する必要があります。
長所 耐油性(ガソリン、軽油、アルコール)・耐摩耗性・耐老化性が良い材料です。
短所 耐候性・耐熱性・耐寒性・耐薬品性・極性溶媒には劣ります。
使用されている商品 ニトリルブタジエンラバーは耐油性に優れているので、自動車部品関連(Oリング・オイルシール・オイルホース)に多く利用されています。

イソプレンゴム・合成天然ゴム(IR)

特徴 イソプレンゴムは、天然ゴム(NR)と構造が似ており天然ゴムの代用品として幅広く使用されています。
天然ゴムと比較し、振動吸収性や電気特性が優れていること、透明で色調が明るく匂いも少ないこと、機械的強度が大きく、物性バランスにも優れていること、価格も安定しているなどの特徴があります。
長所 天然ゴム(NR)と同じ性質を持ち(天然ゴムの使用される所には殆ど代用可能)、安定性が良い材料です。
短所 天然ゴム(NR)に比べ、機械的強度が若干(引っ張り・応力・引き裂きなど)劣り、耐油性・耐熱性には劣ります。
使用されている商品 自動車、航空機タイヤ、搬送ベルト、靴底、糸ゴム、粘着着剤などに使用されています。

ブチルゴム(IIR)

特徴 ブチルゴムは、耐ガス透過性・電気絶縁性・耐候性・耐オゾン性・耐薬品性に優れていますが、加硫性・加工性・耐油性には劣ります。
長所 耐ガス透過性・電気絶縁性・耐候性・耐オゾン性・耐老化性・衝撃吸収性・極性溶剤に耐える特性が良い材料です。
短所 金属や他のゴムに対する接着性・耐油性には劣ります。
使用されている商品 タイヤチューブ、防振材、電線被覆材、ルーフィング、窓枠ゴム、スチームホース、コンベアベルトなどに使用されます。

ブタジエンラバー(BR)

特徴 ブタジエンラバーは、弾性・耐摩耗性・耐老化性に優れているため、タイヤなどにSBRとブレンドして使用されることが多いです。
特性はSBRと似ていますが、SBR・NRと比較して、耐磨耗性・反発弾性・耐老化性が優れ、また低発熱性と低温特性も優れています。用途としてはタイヤ・ベルト・ホースなどに単独、またはSBR・NRなどとブレンドされて使用されることがあります。
但し、耐油性が天然ゴム(NR)と同様悪いので、シールパッキン材料としてはあまり使われていません。
長所 天然ゴムより弾性・耐摩耗性が良い材料です。
短所 耐油性には劣ります。機械的な強度は低く、単品での使用は殆どありません。唯一、スーパーボールは単品使用です。
使用されている商品 自動車・航空機用タイヤ、履物、防振ゴム、ベルト、ホース、プラスチック改質材などに使用されます。

スチレン・ブタジエンゴム(SBR)

特徴 スチレン・ブタジエンゴムは、ゴムの中で最も多く生産されている材料であり、車のタイヤをはじめとして、様々な用途で使用されています。
天然ゴムの代用として開発され、その特性も天然ゴムと似ており、弾性・機械的強度・耐磨耗性などが優れています。
長所 物性ばらつきが少なく、弾性・強度特性・耐磨耗性・耐老化性が良い材料です。
短所 高温時の引き裂き抵抗が弱く、耐寒性が凡用ゴムの中で最も劣ります。
使用されている商品 自動車タイヤ、履物、ゴム引布、運動用品、床タイル、バッテリーケース、ベルトなどに使用されます。

クロロプレンゴム(CR)

特徴 クロロプレンゴムは、幅広い用途に長年利用され続けている合成ゴムです。
機械的強度・耐候性・耐薬品性・耐熱性・耐油性に優れており、非常にバランスのとれたゴムです。
また、難燃性があり・ガス透過率が小さく・接着力(ゴム糊にしたときの)が強いなど数々の特徴をもっています。
長所 反発弾性・耐候性・耐老化性・耐オゾン性に優れ、耐熱性・耐油性が良い材料です。
短所 耐寒性・電気絶縁性には劣ります。
使用されている商品 Oリング、グロメット、コンベヤベルト、ロール、ライジング、ウエットスーツなどに使用されています。

クロロスルフォン化ポリエチレン(CSM)

特徴 クロロスルフォン化ポリエチレンは、着色しやすく屋外での変色にも強く、また無機酸・アルカリ・機械的強度・耐磨耗性に強い特性があります。商品名のハイパロンとして有名な合成ゴムです。
長所 耐老化性・耐オゾン性・耐候性・耐薬品性・耐摩耗性が良い材料です。
短所 圧縮永久歪に劣り(成形時の金型汚染性が見られる)、低温特性(低温で結晶化しやすい) には劣ります。
使用されている商品 耐候性・耐食性塗料、タンクライニング、屋外用引布、耐食性パッキン、耐熱耐食性ロールなどに使用されます。

アクリルゴム(ACM・ANM)

特徴 アクリルゴムは、耐熱性・高温での耐油性に抜群に優れており、オイルシール・Oリング・ホース等の自動車用途部品を中心として使用されています。 機械的強度・耐寒性・加工性には劣る特徴があります。
長所 高温における耐油性が良い材料です。
短所 機械的強度・ゴム弾性・耐寒性・耐溶剤性・耐水性・耐薬品性・金属不足性には劣ります。
使用されている商品 自動車のトランスミッション・クランクシャフト関係のパッキンやシール・バルブシステムなどに利用されています。

ウレタンゴム(U)

特徴 ウレタンゴムは、機械的強度・耐油性・耐磨耗性が他のゴムに比べてとても優れおり、特に磨耗性に優れています。
長所 低温特性・耐オゾン性・耐油性・耐熱性・耐摩耗性が良い材料です。
短所 耐水性・耐薬品性・耐熱性には劣ります。
使用されている商品 ロール、タイヤ、ベルト、ホース、シール材、靴底などに使用されます。

フッ素ゴム(FKM)

特徴 フッ素ゴムは、耐熱性・耐油性・耐薬品性・耐溶剤性・耐オゾン性に優れ・自動車部品・半導体関連機器などに幅広く使用されています。
長所 耐熱性・耐油性・ 耐薬品性・耐溶剤性・耐老化性が良い材料です。
短所 有機酸・ケトン・エステル・アミン系の薬品には耐性が劣ります。
使用されている商品 化学工場の耐食パッキン、ガスケット、ダイヤフラム、タンクライニング、ホース、ポンプ部品などに使用されています。